ジャズギター物語!第1章 民衆の生活に根差した楽器 #1

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ラーゲルンド

コンテンポラリージャズの代表的ギタリスト:Lage Lund

 CONTENTS

 

はじめに

筆者はジャズミュージックが好きであり、自分自身もギターでジャズを奏でる。青年時代の一時期、プロのジャズギタリストになることを目指したことがある。

 

当時、昼はアパレルメーカーの営業マンとして働きながら、夜はジャズスクールに通っていた。結局はビジネスの方にどっぷりとハマり、ギターで飯を食う夢は実現できなかった。

 

とはいえ、もうひとつの夢であった物書き稼業で飯を食うことができているので、自分ではよしとしている。

 

さて、ジャズといっても現代は非常に多様化しており、また音楽の垣根も取り払われているが、それでもジャズは変わらずクールなテイストを持ち続けている。

 

さまざま楽器のジャズプレイヤーもまた、その楽器の持ち味を活かしつつ現代的なジャズミュージックを紡ぎ出している。

 

筆者はジャズの楽器の中で、サックスも大好きであるし、ピアノにもしびれる。ベースもドラムスも然り。その中でもやはり自身も奏でる楽器であるギターには、ダイレクトに心動かされる。

 

せっかく物書きになったのだから、ジャズギターと言う人生の元手の一部分に真摯に向き合ったものを執筆しようという気持ちに、最近ようやくなった。

 

そこで、ジャズギターの草創期から現在に至るまでのヒストリーを、教科書的なものではなく、物書きとプレイヤーの目線で、なおかつ音源もふんだんに紹介しながら綴っていこうと思う。

 

おそらく連載として10回を超え、文字数も5万から10万レベルの長いシリーズになるかと思われるが、ぜひお付き合いいただきたい。

 

 

第1章 民衆の生活に根差した楽器

 

思えばギターほど、さまざまなジャンルの音楽で使われている楽器も珍しいのではないだろうか。

 

クラシックはもちろん、ポップス、カントリー、フォークソング、ボサノバ、フラメンコ、ロック、ブルース、そしてジャズ・・・他にもいろいろあるだろう。

 

世界中のありとあらゆる国や民族に普及し、その音楽に深く浸透している。比較するのはおかしいかもしれないが、トロンボーンやクラリネットでは到底考えられないことだ。

 

それほどギターという楽器は民衆の生活に深く結びついているのだろう。

 

この理由を考えると、まず取り扱いが簡単であり、そして歌の伴奏に向いているということではないだろうか。音楽の素人がピアノやサックスをマスターしようと思ったら、それなりの努力が必要である。

 

もちろんギターも高いクオリティを目指す場合は同様ではあるが、単に歌の伴奏だけでよければ、基本的なコードを押さえやすい形でいくつか覚えさえすればよいのだ。

 

それだけでシンプルな曲は弾きこなせるようになる。弾き語りだって、比較的簡単にできる。

 

伴奏が簡単だということは非常に重宝する特徴である。人を巻き込んでセッションが簡単にできるのだ。音楽のもつ本源的な楽しさを、いとも簡単に体感できる楽器といえよう。

 

一人で黙々とトランペットを練習することと比べて、楽しさという点ではギターの方がはるかに味わいやすいのは事実だ。

 

しかしながら、手軽にできる楽器の宿命として、ギターを奏でる者たちの音楽的素養はといえば、他の楽器と比べて、すべてではないが一般的に浅いことも否めない。

 

何しろ譜面が読めなくても弾ける楽器である。そこは決定的に他の楽器と違うところだ。私はギターが弾けますという人の中で、楽譜を初見で読める人がどれほどいるだろうか。

 

ギター伴奏でコードをかき鳴らしていて、それが何の音なのかわかっていない人がほとんどだ。もちろん、それ自体は決して悪いことではない。

 

またギター以外の楽器は、ひとつの音に対応する箇所、あるいは弾き方はひとつしかないが、ギターは同じ音が大抵3箇所ぐらいで出せるのだ。

 

つまり、ピアノやサックスは押さえるキーが一列に並んでいて、五線譜と結びつけやすいが、ギターは勝手が違う。そういうことも手伝って、一般的にギター弾きは譜面に弱い。

 

しかしギターにはとんでもない強みがある。例えばピアノやサックス、トランペットなどで、曲のキーを半音上げて演奏しようということになると厄介である。ギターは全体的に1フレット分、右にずらして弾けばよいだけだ。

 

思いつくまま書いたが、概ねそのような特徴がある面白くも民衆の生活に根差した楽器、ギターが奏でるジャズの世界を、これから歴史を紐解きながら語っていくことにしよう。

 

〜「ジャズギター物語!第1章 民衆の生活に根差した楽器 #2」に続く〜

 

 

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 筆者のイチ推しギタリスト:ラーゲ・ルンド